博士号への第一関門:Qualifying Exam

博士号への第一関門:Qualifying Exam

Qualifying Examとは?

アメリカの多くの大学の博士課程では、通常入学してから1年後ぐらいのタイミングで、Qualifying Exam (通称Qual)と呼ばれる、学生が研究遂行に必要な基礎知識を十分持っているかを確認するテストが執り行われます。大学によってはQualを突破できないと退学させられてしまうこともあり、いざ合格して入学しても安心してアメリカ生活を楽しむことができないという非常に残酷なシステムとなっています。Qualでは短い時間で問題を解きながらそれを口頭で教授たちに解説するというスタイルが一般的なので、机に向かって解答用紙に数式を書きなぐるスタイルでやってきた我々日本人にとってはこれも大きな障壁かもしれません。

Qualifying Examの内容

ここからは一般の話ではなく全てCaltechの航空宇宙工学専攻でのQual体験談です。幸いCaltechの航空宇宙工学専攻では一度不合格になってももう一度Qualを受けるチャンスがあり、しかもよっぽどひどい出来でなければ合格させてくれます。

受験科目

制御工学が専門なのになぜか強制的に科目は数学、構造力学、流体力学の3科目

試験日程

10月の1週目の3日間

試験内容

各科目制限時間1時間で、問題数は各科目2問ずつ。問題は一年目に受けた授業の内容をもとに出題されます。開始後まず5分間程度問題を読む時間を与えられ、その5分間で問題が難しそうなことにだけ気づいてひたすら焦った後、教授の前で口頭で黒板を使って説明するというアメリカでは典型的なスタイル。

体験談

僕の専門は制御工学なのですが、Caltechの航空宇宙の伝統にのっとってなぜか試験科目として流体力学と構造力学を選択しなければならないという状況に陥ったため、数学以外の勉強のモチベーションが全く上がらず、ぼんやりと不安を抱えたまま流体と構造を無視し続けて9月に入り、のんきにカタリナ島というLA近郊のめっちゃ落ち着いた島で競争社会で疲弊しきった心を癒したりしていました。

その後パサデナに戻って、ふわふわしたまま授業のノートを見つめてみたり、数学ばかり問題を解いたり、やっぱり集中できずにHuluでHow I met your motherを憑りつかれたように見たりしているうちに、同期の2人にQualifying examの練習に誘われ、複数人で勉強するのは苦手なので気は進まなかったものの、参加してみました。今思えばそのおかげで本当に助かりましたが、その勉強会で彼らの流体力学、構造力学の理解度の高さをまざまざと見せつけられ、いかに自分が危険な状況にあるかを思い知らされる結果となりました。その瞬間から無駄に負けず嫌いな性格と、京大で4年間かけて培った試験前ブーストを最大限に活用して、毎日相当な量の知識を詰め込み、試験前には何とか流体とか固体の現象にはそれっぽいことが言える人になりました。

しかし、Qualifying examにはすべて口頭で説明しなければいけないというもう一つの壁があり、しかも事前に問題を解く時間はほとんどないので、黒板に書きながら問題を考えるというスーパーパワーを習得しなければなりませんでした。

もちろん、とてもいきなり問題を解き進めることは僕には到底できない芸当だったので、まず問題に関係ありそうな方程式とかその現象を表す図とかをゆっくり黒板に書いてその間に考える、もしくは板書のスピードの遅さに痺れを切らした教授がヒントをぽろっと言ってしまうのを待つという作戦で、とりあえず流体力学とか構造力学の難しめの方程式をたくさん覚えて、それを図書館のホワイトボードに書きながら解答がわかってそうな発言をたくさんするという練習も積みました。

試験当日数学以外は不安要素だらけでしたが、試験管の教授の方々は、普段見せている鬼の形相からは想像もつかないほど優しく、非常に丁寧な言葉づかいで試験問題を説明してくれたため、黒板に書きながら問題を考えるというスーパーパワーなしでも十分戦うことができ、何とか合格することができました。

まとめ

自分の考えていることをわからないなりにも口頭で説明して他人に伝えるということは、研究するうえで必要不可欠だと思いますし、知識面でも、少なくとも数学は僕の研究の基盤となる学問なので、予想に反して学ぶことは非常に多くありました。もう絶対に二度とやりたくないですが、約1か月間ひたすら苦しんで勉強したことも、結局How I met your motherを惰性で見続けて70時間ぐらい無駄にしたことも、優秀な同期を改めて尊敬できたこともすべて含めて良い思い出になりました。

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