アメリカには日本の典型的なプログラムよりも簡単に、具体的に言えば、卒業論文なしで1年で、修士号を取れる大学が存在します。例えば僕の在籍しているカリフォルニア工科大学(Caltech)の宇宙工学専攻がまさにその例です。

このページのもくじ

Caltech宇宙工学専攻修士課程の例

日本の修士課程って、普通2年間授業も取りつつ研究して→質の高い卒業論文を書いて→指導教員に成果が認められてやっと→卒業、ですよね。一方Caltechの宇宙工学専攻(GALCIT)修士課程の卒業要件はこんな感じです。ちゃんとした説明はここにあります。

GALCITの修士課程卒業要件
  • 以下の138単位を1年で取得
    • 流体か固体力学:27単位
    • 自律システム・制御:27単位
    • 宇宙工学のプロジェクト:27単位
    • 数学:27単位
    • 自分の興味に沿った授業:27単位
    • 毎週世界中の有名な先生の話聞くだけの夢みたいな授業:3単位
  • 研究・卒業論文は必要なし
  • 全部の授業でC(可)以上

卒業研究が必要ない分、確かに授業数は多いです(参考:日本とどう違う?アメリカの理系大学院で授業を受ける!)。一方、全部の授業でC(可)以上っていう比較的緩い要件のおかげで、真面目にやっていればなんとかなるっていうのも事実です。


アメリカ大学院のいろんな修士課程

もちろんアメリカにはこれ以外にも様々な修士課程の仕組みが存在します。博士課程と組み合わせるとその違いがわかりやすいので、その観点でいくつかのパターンをみてみましょう。アメリカで修士号を目指す時は、こんな違いに注意しながら自分に合ったプログラムを探しましょう。

いろんな博士課程
  1. 1年間の修士課程+4年間の博士課程
  2. 2年間の修士課程+3年間の博士課程
  3. 5年間の博士課程一貫コース、修士号付き
  4. 5年間の博士課程一貫コース、修士号なし
  5. 他の大学で修士を取って3年間ぐらいの博士課程

もしかしたらアメリカは広いので、他にもパターンがあるかもしれません。年数は目安で研究室や大学によって±2ぐらい変動します。以下僕の記憶に基づいた情報なので、正しい情報はそれぞれのWebサイトでちゃんと確認してください。

1と3がCaltechの航空宇宙工学専攻のケースで、博士課程一貫コースに入学した学生は全員、途中で授業の単位数の要件を満たすと、自動的に修士号が授与されます。修士課程だけに入学して1年だけで終えることも可能です。大学によっては、授業の単位数だけでなく、修士論文的なものを要求する場合もあります。例:Caltech・MIT・Stanfordとかの航空宇宙工学科←修論ナシ(修論アリのところも修論ナシオプションがあったりします)

3は日本と同じパターンで、まず修士課程に入学&卒業して、その後また博士課程に入学&卒業するというものです。修士号の取得要件に修士論文の提出が含まれていることが多いです。この仕組みを取っている大学や学部の場合、違う大学で修士号をすでに取っていると、5のケースのように博士課程が3年間で済む場合もよくあります。航空宇宙を含め、工学系の分野ではこのパターンもしばしば見かけます。例:どこかでみたような気がするんですが思い出せません、そもそも年数に制約を設けていないところが多いのかも

4のパターンはサイエンス系の学部、いわゆる理学部系の学部に多く、Caltechでもたぶんどこかの学部はこの制度を取っている気がします(この場合、修士号を取得するだけのプログラムが別で存在することもあります)。例:Caltech Chemistry・UCLA Molecular and Medical Pharmacology


アメリカでの修士号の位置づけ

ちょっと残念な話ですが、アメリカで修士号だけを取ろうとしている人に一応伝えておきたい内容です。

僕の場合2のパターンでしかも修士論文の提出が不要だったので、修士卒という肩書を得るというだけの意味では、かなり得をしているのかもしれません。しかしここに書いたように、1年で修士号取得に必要な単位数を稼ぐのは簡単ではないですし、それだけでなく、こういった修士号の制度上、アメリカでは日本に比べ修士号がやや軽んじられる傾向にあります。

その理由として、アメリカの博士課程にはQualifying Examと呼ばれる進級試験のようなものが存在し、いくつかの大学では、その試験を突破できなかった学生が修士卒として世に出るという仕組みになっているからです。もちろん3とか4のパターンで修士号を取得していれば学部卒よりも評価が上がることは間違いありませんが、僕のような留学生にとってはそれだけで純アメリカ人と戦うのは少し分が悪いのもまた事実です。

一方Ph.D.(博士号)は、日本よりも評価されやすく、例えばPh.D.を持っているだけで初任給がめちゃくちゃ上がったり(ざっくり言うと年収1000万円以上)、ビザが申請しやすくなったりと、わかりやすいメリットがたくさんあります。正直僕も日本にいるときは、博士課程に進むことにそんなに乗り気ではなかったのですが、こんなアメリカの実情をふまえて、しぶしぶ5年間研究する道を選びました。

とはいえ修士号を取った後こっちでそのまま頑張っている人もたくさんいるので、どんな大学院留学がベストなのかはわかりませんが、こういった事情の違いも踏まえて、自分にとって最適な選択ができると良いですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です