推薦状の意義
アメリカの大学院では、勉強ができる能力よりも研究ができる能力、1を100にする能力よりも0を1にする能力がより高く評価されます。したがって、学生の研究能力を評価することは入学審査において最も大事なプロセスなのですが、研究成果物がない場合、推薦状を誰に書いてもらうか、そして何を書いてもらうかがこのプロセスにおいて最も重要な役割を果たします。これについてはUCSBで博士号を取得された加藤先生の記事が非常に参考になるのでぜひ読んでみてください。
推薦状を誰に書いてもらうか
理想的には、順に
- 行きたい研究室の先生
- 行きたい研究室の分野で世界的に有名な先生
- 行きたい研究室の先生と知り合いでかつその分野で有名な先生
- 行きたい研究室の分野と少し違う分野で世界的に有名な先生
- 行きたい研究室の分野で日本で有名な先生
- 行きたい研究室の分野と少し違う分野で日本で有名な先生
- 行きたい研究室の分野の先生
に推薦状を書いてもらえることが合格に有利に働きます。とはいえここに書いたような推薦者を見つけられるかどうかはある意味運次第であり、かつ書いてもらう人よりもその内容の方が圧倒的に重要なのでとりあえず安心してください。
推薦状に何を書いてもらうか
日本の先生に推薦状をお願いする場合、推薦文を自分で書くという状況になることがあります。その時にいくつか注意することがあるので、まず例を用いて説明します。
- 例1) 悪い例
〇〇君は、宇宙工学という分野に対して並外れた情熱と知識を持っており、彼の日頃の研究態度と成果には眼を見張るものがある。
- 例2) 良い例
〇〇君は、△△というアイディアで地球周回軌道からエウロパ周回軌道への移行に必要な燃料を従来の☆☆%減らすことを可能とした。
こう並べると明らかだと思いますが、例1は完全に主観に基づいた美辞麗句であり、推薦している学生の研究能力の評価には全く何の役にも立たないことが分かります。一方例2では、直接学生を褒めてはいないものの、客観的、定量的かつ具体的に学生の研究成果を述べ、学生の研究能力を評価する材料の1つを提供しています。
推薦状に求められる内容は例2のような事実の蓄積で、このような自分の研究能力を示すエピソードを推薦者との間でいかに多く作れるかという点が重要なのであって、例1のような綺麗な言葉で主観的事実を羅列してもらうことには何の意味もありません。
したがって、たとえ行きたい研究室の分野で世界的に有名な先生と知り合いで、その先生がノーベル賞級の研究者だったとしても、彼らと自分との間に研究能力を示すエピソードが1つもない限り、その人に書いてもらう推薦状には、仲の良い友達に書いてもらった推薦状ぐらい何の価値もありません。
どんな点を具体的に書いてもらうべきかは、行きたい大学ウェブサイトに書いてあることが多いです。たとえばCaltechではここに書かれています。推薦してもらう先生を探す場合には、ぜひこれらの点に注意してみてください!
体験談
僕の場合は、
- 指導教員の先生(制御工学)
- 授業中にお願いして勝手に研究させてもらった時の先生(軌道工学)
- 大学のプログラムを利用して参加したインターン先の大学の先生(宇宙物理学)
に推薦状をお願いしました。University of Heidelberg の先生だけは、専攻が宇宙工学ではなく理論宇宙物理学であり、かなり分野が違ったのですが、自分の能力、特に研究能力をより深く評価できる先生を探した結果この方を選びました。
推薦状を 4 通必要とする大学もあり、4 通目は JAXA でインターンをしていた時の受け入れ先の方に推薦をしていただきました。
日本の大学に通っている限り専攻する分野で有名な先生と知り合う機会はたくさんあるはずなので、積極的に早めに行動を始めると良いと思います!
自分は塚本さんと違って、京大ではなく岡山大なのですが入れるアメリカの院のレベルというのは日本の学歴は影響しないのでしょうか??京大や東大などの名門と岡山との差は影響するのはすると思いますがそれは大学での研究内容などに京大と岡大で差が出るなどの理由でしょうか?
京大や東大だとアメリカへ留学している学生が少しだけ多いため、志望先の大学に認知され出願に有利となることは稀にありますが、基本的には研究能力、成果をもとに合否が決まるので、それらさえしっかりアピールできればどの大学出身かはほとんど関係ないと思います。むしろ京大や東大のネームバリューはアメリカではあまり通用せず何の意味もないことがほとんどなので、気にせずがんばってください!